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導電パターン形成

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パッド印刷工法による導電パターン形成技術

 従来困難だった三次元曲面への導電パターン形成が、パッド印刷工法で可能になりました。

用途 : モバイルデバイスの内部アンテナ、立体回路(MID)など。

開発の背景

 昨今、ナノ技術が進み、さまざまな分野(エレクトロニクス、バイオテクノロジー等)で応用され、各用途に合わせた新素材やデバイスが生まれています。ナノスケールになるとマクロスケールとは違った特性が生まれ、利用分野も広がってきています。
 その中で、導電ペーストもさまざまな研究開発が成されています。エレクトロニクス用途のナノ材料として各用途で、微細、膜厚、導電性など、必要とされる特性が多様化してきています。また、転写される素材や表面状態、表面処理等の条件によっても異なる特性が要求されます。これらの課題は従来のインキメーカーや金属粉体や樹脂などのメーカーが積極的に参入し、製版メーカー、印刷機材・資材メーカー等も併せて共同研究のかたちを取るなどもして技術を確立することで解決されつつあります。

 導電ペーストは、加熱焼結して用いるものは、金属粉末、ガラスフリット、有機ビヒクルなどから形成され、種々の用途に向けた特性改良がなされています。樹脂中に銀(Ag)、カーボンブラック(C)、銅(Cu)などをフィラーとして分散したものや、水にコロイド状のグラファイトを分散させたものなどがあります。
 粒子をナノ化させることによって微細なパターンの再現が可能になりますが、微細なパターンで良好な導電性を得るためには、配合される導電粉体の大きさに依存する要素が大きくなります。つまり、導電粉体粒子間の接触性により導電性能が左右されます。導電ペーストに使用される導電粉体は焼結の進行により各粒子間の接触抵抗が下がり、その結果、良好な導電性を示します。導電ペーストは、転写方式(印刷方式)によってもその特性を変える必要があります。 MID(Molded Interconnect Device)の場合、70℃程度の低温での焼結が必要とされることが多いですが、ナノサイズの金属粒子の低温焼結性を利用した金属ナノ粒子ペーストも開発され一部では使用されています。

 

 導電ペースト転写の方法として、スクリーン印刷方式が用いられることも多いですが、基本的に平面への転写に適した工法であり、対象物が立体形状の場合不向きです。
 スマートフォンに代表されるモバイルデバイスの軽量化や薄型化は、利便性や製造コスト削減などの観点からも必然であり、それらの筐体内部に求められる導電パターン形成も必然的に改良や新技術が求められています。 私たち特殊阿部製版所は、これらのニーズを鑑み、三次元曲面へのパッド印刷工法での導電パターン形成技術の開発を以前から進めてきました。

 

 

パッド印刷工法の概要

パッド印刷工法の概要.jpg

 パッド印刷方式はグラビアオフセットの1種です。平面性良好な鋼板上に、印刷パターンをエッチングで凹状に形成し、印刷版を形成します。版面全体にペースト(インキ)を塗布した後、非画像部の不要なペースト(インキ)をドクターブレードで掻き取り、パッドと呼ばれる柔軟性があるシリコン等のゴムに版面のペーストを転写し、それを被印刷物に転写する方法です。柔軟性があるパッドでペースト(インキ)を転写するので、被転写体が平面のみならず凹凸等の立体形状であっても印刷が可能です。パッドの形状は、被印刷物、印刷パターンなどによって適切なものを選定する必要があります。

用途

 主に、モバイルデバイスやテレビなどの電子機器、電子部品、自動車部品、さまざまな容器類、錠剤等、人々の生活に密接な製品へ加飾・表示印刷に用いられています。パッド材質の研究開発が進み、溶剤希釈型のスクリーン印刷用インキから紫外線硬化型インキ(UVインキ)や、接着剤、レジスト、食用インキ等の一部の水性インキのような、従来パッド印刷方式には不向きとされていたペーストやインキの利用も可能になってきています。

パッド印刷工法による導電パターン形成技術開発の経緯

 スクリーン印刷方式と比較して、ペーストの流動性・レオロジー性の許容範囲が広く、機構的に複雑なものは不必要で、1サイクル数秒程度で転写可能です。微細パターンについては、ペースト(インキ)内物質のナノ化や分散性に依存度が高く、必要な再現性に対し改良が必要な場合もあります。当社独自の製版技術改良が進み、現在は、エッチング深度にもよりますが、版上L/S(ライン・アンド・スペース)40μm/40μmくらいまではパターニング可能です。一般的にパッド印刷方式は厚膜印刷には不向きとされていますが、当社独自のパッド材質改良が進んだことと、ペースト(インキ)の改良、転写条件のチューニング等で、現在は10μm以上の厚膜印刷も可能になってきています。特殊阿部製版所は、印刷版、パッド、ドクターブレード、治具等、パッド印刷に不可欠な副資材を開発・製造すると共に、印刷機の販売も行っています。

 パッド印刷工法で導電パターンを形成するためには、パッドの材質が最重要要素であり、その開発が不可欠でした。従来のパッド材質では内部のオイル成分や各種基材がペーストを弾き過ぎて、版面からパッド表面にペーストを付着させることが困難であるケースもありました。課題をクリアすべく、さまざまなナノペーストや樹脂、オイル、有機化合物等の配合と分散の数多くのテストを経て、解決に至りました。

導電パターン

既存技術との相違点、新規点

 印刷には、オフセット、グラビア、フレキソ、スクリーンなどさまざまな方式がありますが、多様化している現在において各方式は限定的な使用に留まっており、市場の潜在ニーズに対応しきれているとは言い難い現状があります。この用途にはこの印刷方式という固定概念を無くし、各印刷方式を見直し、また、各印刷方式同士の新たな組み合わせ(ハイブリット化)などで、今まで技術的・コスト的に不可能とされていたことを可能にすることが大切だと言えます。既存の方式と比較すると、パッド印刷工法による導電パターン形成技術は柔軟性に富んだパッドでペーストを転写するので、被転写物の形状制約についての許容性が高いといえます。

実施例

《実施例1》新開発された導電ナノペーストと当社開発の新材質パッドを用いた例

 パッド印刷工法で導電ナノペーストをパターニングし、導電パターンを形成する方法です。
 まずパッド先端部が被印刷物の底辺部に接触、その後、順次被印刷物形状に追従変形しながら被印刷物側面部にも接触して行き、パターンを転写して行きます。結果的にペースト膜厚10μm以上の良好な導電パターンを形成。本実施例のように、被印刷物形状に見合った形状のパッドを選定によって、従来困難であった立体形状等にも導電ペースト転写が可能です。このような立体形状にパターン形成する場合、被印刷物側面部に転写されるパターンの変形が発生しやすくなるため、版のパターン補正が必要な場合もございます。

導電パターン

《実施例2》ポリピロールインキを無電解めっきの下地材として導電パターン形成した例

 パッド印刷工法を用いて、導電性高分子であるナノ分散ピロール(PPy)インキでワークにパターニングし、それを下地材として銅などの無電解めっきで導電パターンを形成する方法です。PPyと金属膜は、化学的結合で強固に結合されます。また、ワークがPCやPPでも1.0kgf/cmのピール強度が得られています。この工法は、従来のエッチングメッキ法とはまったく異なる以下のような特徴があります。

めっき法.jpg
 

(1)エッチングレスのため、環境への負荷が少ない
(2)これまで困難とされていたプラスチック素材へのめっきが可能
(3)導電パターン形成以外にもパターン化されためっきが可能
(4)工程の短縮による大幅なコストダウンが可能

今後の展開

 パッド印刷工法によって三次元曲面形状への導電パターン形成写が可能になり、被印刷物の形状制約が大幅に緩和されることには大きな意義があると考えます。通電させるための部材を必要とせずに直接パターンを形成し、シンプルな方法で3次元MID(Molded Interconnect Device)製造が可能になるということは、さまざまな製品の薄型化、軽量化や、省工程化の一助になるものと確信します。今後もさらに改良を重ねていきます。
 昨今、導電ペースト、接着剤、レジスト、紫外線硬化型インキ等、従来パッド印刷工法では転写が難しいとされていた広義でのペーストをパッド印刷工法で三次元曲面にパターニングしたいというニーズが急増しています。
 特殊阿部製版所では以前からこれらの転写可能なパッド開発を進めてきており、紫外線硬化型インキ(UVインキ)転写技術も確立しました。当社は特殊製版の技術集団として、これらの他にもさまざまな技術開発を続けています。私たちは、今後もニーズに合った技術を提供することで、社会に貢献して行きたいと考えています。

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